進めばやるしかありませんので、自分の判断に無根拠な自信を持ってほしいと思います。
株式会社福永製作所
菊池 和晃
京都市立芸術大学大学院
京都には伝統ある企業やスタートアップなど、さまざまな魅力ある企業があります。そんな京都企業の「採用担当インタビュー」を特集しています。
その中で今回は、「株式会社福永製作所」で働く菊池 和晃さんにお話を聞きました。
芸術学部に通っていたので、作品制作や展覧会に参加したり、休日にはギャラリーや美術館を巡っていました。ものづくりが好きなので溶接や木工、樹脂加工に写真の現像などといった様々な技法に触れることができたのは非常に楽しかったです。後は年に数度の自身の展示と課題作品の制作に追われる4年間でしたので、ずっと何かを作っていた記憶しかありません。
学部卒業後は就職ではなく進学の道を選びました。アーティストとして活動をしていきたいという思いがより明確になったので、制作時間の確保や研究面のことを考えた結果です。将来に対する不安は勿論ありましたが、「やりたいことをやる」その為には何をすることが必要なのかを真剣に考える為にも、とことんそれと向き合いたかったのです。
弊社は祖父が起こした金属加工の会社です。鉄やアルミ、ナイロンなど様々な部材から図面通りに製品を削り出し製作しています。
私は幼少期からこの会社に通っていました。最初は金属の端材でサイコロやロボットのパーツなどを作り遊んでいましたが、年齢が上がるとともに大きな機械が動き製品を作り出す光景に見入るようになりました。思えばこのことが私のものづくりに強く興味を持つようになった理由の一つかもしれません。
大学院の卒業が迫ったとき、その祖母から後継がおらず困っているという話がありました。正直に言えば当時は自分自身のやりたいことが優先だったのであまり乗り気ではありませんでした。ただやはり幼少期から知っている場所が無くなるかもしれないことへの寂しさと、自身のものづくりの原点を見つめ直したいと思い入社することを決めました。
最初のうちは社長に機械の動かし方や製品の動かし方といった現場の仕事を教えてもらうことから始まりました。NC旋盤と汎用フライス盤の操作方法を学び、製品作りの流れと全体の仕事の流れ、それぞれのつながりを学びました。
2年ほど経過した後に汎用ホブ盤を使用した歯切り加工の担当を任されました。全体の流れで言えば中盤〜終盤の作業工程であることが多く、先輩達の加工した品物を仕上げなければいけないというプレッシャーはありました。
ですがそこには、誰かと一つのものを作る連帯と責任を感じることができ、また美しく製品を仕上げることができる喜びを感じとることができました。
現在では、歯切り加工や汎用フライス盤での仕事と同時に経営についても学び始めています。これまで個人的には、全体とコミュニケーションを取り美しく製品を仕上げることにこだわっていましたが、経営の目線で見ると「ものづくりの場」を形成していくという方向性が自身の考えが加わり、より俯瞰的に会社のことを見ることができるようになりました。そのことは現在でも続けているアーティスト活動に対しても良い影響を与えているかもしれません。
素晴らしい文化に囲まれていることが非常に魅力的に感じます。
寺社仏閣などの昔の建造物や伝統工芸などとの距離が近く、きっと大昔の人もこの場を訪れ同じものを見たのだと思えることが多いように思えます。一方的かもしれませんが、時代を超えた共感を得ることができることに個人的には幸福を感じます。
そして何より美術館やギャラリーが充実していることと、昔も今も様々な技術が混在しておりものづくりの為の刺激が絶えないことです。
私自身は就職活動を経て就職したわけではありませんので、その面で何か気の利いたことをお伝えすることは難しいです。
ただ「やりたいこと」が明確にあるならその周囲に目を向けるのも面白いものです。多くの連帯によりそれが支えられていること、また支えているということを知ることができたなら、仕事として何を選択するかの判断材料が増えるのではと思います。
迷うこともあるかもしれませんが、進めばやるしかありませんので、自分の判断に無根拠な自信を持ってほしいと思います。