Feature 京都の企業特集


きものは日本の文化そのもの。ADESSOが実践する提案型の接客と「人」の力で、伝統を未来へ
日本の伝統文化が息づくまち・京都には、日本の文化を世界に発信している企業が多く、今回ご紹介する株式会社ADESSOも、関西に8店舗、北海道に5店舗のきもの専門店を展開し、独自の企業理念である「ADESSO-DNA」を掲げ、一対一の提案型接客で、日本が誇る文化の1つである、きものの魅力を伝えています。
今回は、同社代表取締役社長・尾崎 道孝(おざき みちたか)氏にお話を伺いました。創業経緯、人の心を大切にする企業理念、そして次世代へのメッセージまで、きもの文化を熱く発信する経営者の想いにせまります。
- きもの専門店を創業された経緯について教えてください。
はい。すべての始まりは、最初の就職先がきもの専門店だったからです。なぜきもの専門店に就職したのかを思い返せば、幼少の頃に祖母がこの仕事をしており、母はきもので生活をしていたので、きものを見慣れていましたし、伝統的な和の染織に魅力を感じたからです。
その後、転職した兵庫県の呉服店で社内起業をさせていただき、約10年続けていましたが、オーナーの判断で事業をやめることになり、事業継続ができなくなってしまいました。突然のことでどうしたら良いか悩んだ時に「もう一度好きな仕事ならやってみたらどうか」というアドバイスを周囲からいただいて、「今」を大切にするという想いから「ADESSO(イタリア語で今という意味)」という社名で、2007年に再チャレンジすることにしました。
- 再挑戦できたのは、社内起業での充実した経験があったからでしょうか。
その通りです。社内起業できもの専門店を立ち上げる機会をいただきました。当時は100店舗まで事業を拡大し、きもの専門店を中心に、宝飾品専門店約10店舗、和風カフェ3店舗、女性向けインナーウエア店舗1店舗と、多角的な事業展開を行いました。店舗運営から商品開発、マーケティングまで、事業運営の全工程を経験できたことで、100店舗規模までの事業展開に必要なノウハウを身につけることができました。この経験があるからこそ、新たにビジョンをかかげ、ビジョン達成に向けてチャレンジし続けることができています。
- 経営理念として、どのようなことを大切にしていますか。
アメーバ経営という考え方を基盤にしています。これは京セラ創業者の稲盛和夫氏が提唱した経営手法で、組織を小さな単位に分けて、それぞれが独立採算で運営するという考え方です。アメーバのようにどんどん分裂して新しいものができていくという発想で、一人一人が株式会社だという考え方から、それぞれが経営者意識を持って成長し、いずれは独立することも可能だという理念です。こうした「人」を基盤とする考え方の一方で、事業を拡大していくための仕組みづくりも重要です。
多店舗化についてはアメリカのチェーンストアを参考にしました。社内起業当時、ウォルマートやマクドナルド、ダラージェネラル、GAPなど、アメリカではさまざまなチェーンストアが成功モデルとして確立されていたので、そういったものを勉強させていただいて多店舗化に踏み切りました。基本的にチェーンストアはローコストオペレーションとセルフサービスが中心ですが、私たちは提案型の接客を大切にしています。
- 提案型の接客を大切にする理由を教えてください。
きものは単なる商品ではなく、日本の文化そのものだからです。きものには、各産地で丁寧に作られた職人さんの想いが込められています。その想いをお客様に伝えるには、一対一でじっくりと向き合う必要があります。商品の背景にある物語、着こなしの提案、お客様のライフスタイルに合わせたコーディネート。これらは効率だけを追求していては決して実現できません。
これは近江商人の「三方よし」の考え方に通じます。売り手よし、買い手よし、世間よしという考え方で、職人さんの仕事の価値を正しく理解し、適正な価格でお客様に提案することで、伝統技術の継承にも貢献できると考えています。私たちは「きものの美しさときものを着る喜び」、そして「伝統技術と産地・職人たちの想い」をお客様に届ける架け橋となることを1つの使命と考えています。
- ADESSO-DNAにある「三つの心」とは、どのようなものですか。
ADESSOが大切にしている「三つの心」とは、社員一人一人が持つべき心構えを示したものです。「感謝の心」は自分やまわりの人を大切にする心、「思いやりの心」は相手を許す謙虚さや、まわりに奉仕するやさしさ、「自立の心」は一人一人が会社の代表としての責任感や使命感を育むことです。
私たちはこれらの心構えを大切にしながら、きものの楽しさや美しさを広め、日本全国の産地や職人の方々の想いを1人でも多くのお客様に伝えていきたいと考えています。「日本中を、きものファンでいっぱいにしたい」という合言葉は各店舗に目に見える形で掲示し、社員一人一人が日々意識しながら接客にあたっています。
このように社員一人一人の成長を促すことが、最終的には会社全体の社会貢献へとつながっていきます。
私は、社会に貢献することが、企業の存在意義だと考えています。私たちができる貢献は、まずお客様に喜んでいただくこと、そして社員が生きがいを持って働ける場を作ることから始まります。私たちが各地域に店舗を展開し、雇用が生まれ、地域に根ざした経済活動を通じて社会に還元されます。
その地域の文化や経済の一部となることで、子どもたちの未来にもつながっていく。そうした循環を生み出すことが、私たちの役割だと思っています。こうした貢献の根本にあるのは「人」の存在なのです。
- 大切にされている「人」の力について詳しく教えてください。
私たちにとって「人」の力とは、社員一人一人がお客様と真摯(しんし)に向き合い、心を込めた接客をすることです。お客様目線で「どんなもの・コト」が喜ばれるのかを考え、単に商品を売るのではなく、きものの魅力や着る喜びを伝えることを大切にしています。だからこそ、私たちを信頼していただけて、ADESSOの「ファン」が生まれるのです。
例えば、私たちの店舗にたまたま立ち寄っていただいたお客様が、私たちの提案で「こんな商品や着方があるのか」「こんなに一生懸命勧めてくれる方がいるんだ」と感じて、きものを購入してくださいます。
たとえその場でお求めいただかなくても、後日、再来店くださったことが、お手紙やSNSの投稿で分かります。社員の接客が本当に良いということ、店長のリーダーシップで社員が成長していること、お客様に感動と喜びを提供できていることを強く感じますね。
- 若手社員の活躍についてお聞かせください。
入社半年でチーフ、2年で店長など、たくさんの若手社員が活躍しています。「やってみたい」という気持ちを応援し、努力をしっかりみてくれる環境だからこそ、意欲次第で多彩な経験を積むことができます。年齢や性別に関係なく、自分のがんばり次第で店長や部長、そして企画や商品開発など、常に新しいことに挑戦できるのがADESSOの魅力です。
きものについての知識がなくても大丈夫です。毎月さまざまな研修を行っており、研修やサポート体制は万全です。きものや伝統文化、接客・販売に興味がある方はもちろん、興味のある分野や今までの経験が一見「関係ない・縁遠い」と思うような方だったとしても、その経験や視点を活かして活躍できる環境があります。
- どのような人材を求めていますか。
明るさや素直さを持ち、チャレンジ精神旺盛な方を求めています。文系や理系といったことにはこだわりません。日本の文化が好きで、日本を盛り上げたい、世界に日本の良さを売り込んでいきたい方とぜひご一緒したいです。
ADESSOは、一人一人が経営者のような意識を持って、責任と権限を持ちながら成長していく組織づくりを目指しています。いずれはもっと世界で活躍できる専門店になりたいと思っていますし、そういうチャレンジができる人、チャレンジしてみたい人をお待ちしています。
実際、きものは世界に通用するファッションです。京都をはじめ日本の観光地では、海外の方がきものにまつわる商品を手に取ってお求めいただいていますし、きものを着て散策されたり、写真を撮ったりして楽しんでいらっしゃいます。こうした光景を見るたびに、きもの文化の持つ普遍的な魅力と、世界展開の可能性を強く感じています。
- 京都で働きたいと考えている人に向けて、メッセージをお願いします。
人生100年時代において、長い人生をいかに充実させ、社会のお役に立てるのかが重要だと思います。20代から100歳まで80年という長い時間があります。この期間を通じて、日本の文化継承という素晴らしい仕事に携わることができれば、きっと大きなやりがいを感じることができるはずです。
もちろん、社会貢献だけでなく、仕事そのものが楽しくなければ意味がありません。チームで協力し合って目標を達成する喜び、スポーツチームが勝利をつかむ瞬間のような達成感、時には苦労や困難も含めて、そうしたすべてを仲間と共に体験できる職場でありたいと思っています。
そして、その「仲間」に年齢は関係ありません。当社では、80歳以上の“先輩”も元気に活躍していらっしゃいます。健康である限り、それぞれのペースで長く働き続けられる環境を整えていきたいと考えています。私たちはきものを通して美と幸せと感動を提供します。そして、きもの文化をもっと身近なものにしていきたい。ぜひ一緒に日本の文化を世界に発信していきましょう。
ありがとうございました
今回インタビューさせていただいたのは『株式会社ADESSO』様です
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