Feature 京都の企業特集


文化の壁を超える物流の力。
「日本通運」が取り組むグローバル人材活用の最前線
「学生のまち・京都」では、日本人学生だけでなく、多くの外国人留学生が学んでいます。
京都市では、留学生の方が卒業後も京都で活躍できるよう、就職支援に力を入れており、留学生と企業の交流会や留学生向けビジネス日本語講座の開催など、さまざまなサポートを行っているところです。
そうした中、京都には、留学生を含め、誰もが活躍できる職場づくりに取り組む魅力的な企業が多くあります。
今回は、留学生採用に積極的に取り組む「日本通運株式会社 京都支店」採用担当の井ノ口 聖子(いのくち せいこ)さんにお話を聞きました。
- 日本通運の事業について教えてください。
日本通運は、NXグループの中核企業として陸・海・空すべてを網羅する総合物流企業です。BtoBの物流を中心に企業間の貨物輸送を手掛けるほか、倉庫業務やDX(デジタルトランスフォーメーション)による物流の付加価値向上にも力を入れ、NXアメリカやNX中国などグローバルに展開しています。さらには海外引越や国際輸送の分野でも、たくさんのお客さまにご利用いただいています。
中でも京都支店においては、京都・舞鶴・滋賀の各エリアで物流ネットワークを拡大しています。京都では大型倉庫と陸上輸送、舞鶴では港湾を活用した海運、滋賀では巨大な倉庫を基盤とした物流を展開しています。大企業との取引が多く、各顧客専用の物流体制を構築し、単なる輸送を超えた価値提供を行っています。企業や病院の設備移転、改札機や新紙幣対応機器の一斉交換の輸送など、みなさんの暮らしを支える大規模な物流にも貢献しています。
- 井ノ口さんの入社の経緯を教えてください。
日本通運に転職する前には、国立民族学博物館(みんぱく)で働いていました。世界各国の文化や歴史を専門にする多国籍の研究者と一緒に働く機会が多く、異文化理解の重要性を肌で感じる毎日でした。その後、夫の赴任に伴いアフリカのモザンビークで暮らすことになりましたが、世界最貧国の一つともいわれる場所で1歳の娘と生活する毎日は、想像以上に困難の連続でした。
例えば、水道の蛇口から出てくるのは茶色く濁った水。市場で買ったお米には細かい石などが混じっていて、とても食べられるものではありませんでした。そんな中、日本政府が駐在員向けに「政府米」と呼ばれるお米を届けてくれたのです。その輸送を担当していたのが日本通運で、安全な食料が手元に届いたときの安心感は、今でも忘れられません。
帰国後は、「働くなら、私が助けられたように人々の暮らしを支える仕事がしたい」と思っていました。そんな折に日本通運の求人を見つけて、2017年に京都支店に採用され、一昨年の9月からは採用業務に携わっています。
- 近年、日本通運では外国人の採用が増えているそうですね。
物流業界における外国人採用というとフォークリフトオペレーターなどの技能職を想像されるかもしれませんが、当社では主に営業事務職としての採用を進めています。特別な「外国人枠」はなく、技術・人文知識・国際業務(技人国)ビザを持ち、意欲や能力が高い人であれば、日本人と同じ基準で選考を行い、積極的に迎え入れています。
昨年、京都市主催の「留学生と企業の交流会」に参加し、約20名の留学生と意見交換や情報共有を行いました。
この交流会を通じ、4名からご応募いただき、見学や面接を経て、2名の採用が決定しました。留学生との交流が実を結び、有意義な結果を得ることができました。
これまでにも、大学での講演などをきっかけに、2024年までに7名の外国人が入社し、2025年4月には、交流会で出会った2名が新たに加わる予定です。
採用担当になったばかりの頃、外国人採用について分からないことが多かった私が助けを求めたのが、京都ジョブパークでした。京都ジョブパークとは、求職者の就職支援や企業の担い手確保・定着支援などを行う京都府の機関のことです。あれこれ相談し、前述の京都市主催の交流会もそこで紹介してもらいました。
- 外国人と日本人が同じ業務をしていて、大変なことや困ったことはありませんか?
国籍の異なる社員が同じオフィスで仕事をしていても、大きな問題が起こることはありません。日本人同士でも関東と関西では文化に違いがあるように、多少のコミュニケーションの違いがあっても、各自がその違いを尊重して自然に受け入れています。
また、採用した外国籍の社員は非常に勉強熱心で、日本語の表現が分からないと休憩時間に自主的に学んでいる姿をよく見かけます。会社としても英語・日本語対応のeラーニングを提供し、合同ワークグループを通じて外国籍の社員が孤立しないような環境づくりを進めています。
2037年の設立100周年を見据えて輸出入分野にも注力する当社では、留学生や日本で働きたい人を海外から受け入れる機会が増えていく見込みです。将来的には、日本通運で培ったスキルを母国に持ち帰り、現地で活躍する人材も出てくるかもしれません。グループ内では法人をまたいだ出向・転籍を奨励する制度も始まっており、国を越えたキャリアの選択肢も広がっています。
- 外国人採用において大切にしていることは何ですか?
当社が何よりも大切にしているのは「人柄」です。私が中途入社した際にも強く感じましたが、当社はチームワークを重視する社風が強く根ざしています。物流の仕事は、一人の力だけでは成り立たないため、他者とのコミュニケーションを大切にできるかどうかという点を大切にしています。
面接では、応募者のキャリアプランややりたいことについて丁寧にヒアリングします。外国籍の方の中には、「永住権を取りたい」といった具体的な目標を持っている方も多いのですが、入社後に状況が変わる可能性もあります。そのため、短期的な目標だけでなく、長くこの職場で働けるか、チームの一員として成長していける方であるかどうかを重んじています。これまでも、私自身が面接を通じて「この人と一緒に働きたい」と思える方を採用してきました。
理想の人物像を具体的に挙げるならば、地域のお客さまとしっかり向き合い、より良い物流の形を考えられる人です。指示通りに仕事をするのではなく、効率的かつお客さまにメリットがある方法を考えられる人が理想です。また、チームワークを大切にし、何か問題が起きてもみんなでリカバリーするための柔軟性も求められます。
- 京都で働きたいと考えている人に向けて、最後にメッセージをお願いします。
物流業界というと「大変そう」というイメージを持たれがちですが、日本通運は違います。大手企業ならではの、しっかりとしたワークライフバランスがあり、安心して働ける環境が整っています。特に私たちは、ただ物を運ぶだけではなく、震災やコロナ禍のような非常時にも人々の暮らしを支える役割を果たしてきました。物流の仕事には社会貢献の側面があり、大きなやりがいを感じています。
繰り返しになりますが、当社は、魅力的な人材であれば国籍は一切の障壁になりません。
以前、当社のある外国籍の社員が「国籍やその人が生まれ持った文化というのは、個性のようなもの。違いがあって当然だと考えられるような人材こそが、当社にピッタリなんだ」という話をしていました。当社には「アメリカ人だから」「中国人だから」「インドネシア人だから」とくくるような考え方はなく、互いをリスペクトし合います。これが当社の最大の魅力だと思っていますので、一人でも多くの方にそんな当社で働きたいと考えていただけたら幸いです。
ありがとうございました
今回インタビューさせていただいたのは『日本通運株式会社 京都支店』様です
法人ページはこちら日本通運株式会社 京都支店