Feature 京都の企業特集
100分の1ミリの精密さと、社員の「やりたい」を即決する熱量。
ミヤコテックが描く、ものづくりの幸福な未来
ミヤコテック株式会社は、100分の1ミリ単位の精密技術を武器に、特別なプラスチック製品をつくる京都のメーカーです。他社がやりたがらない難しい仕事に挑戦し続ける同社は今、大きな変化の時を迎えています。
それは、若手社員の自由なアイデアや特技を、すぐに職場の改善や広報活動に活かす「みんなが主役」の文化への転換です。技術を磨くだけでなく、働く人の「やってみたい」という気持ちを何より大切にする同社。大企業での経験を経て家業を継いだ市川 裕記(いちかわ ひろき)社長に、これからのミヤコテックが目指す、温かくてしなやかな成長のかたちを伺いました。
- Q1: 家業に戻られた経緯と、戻ってから感じた「ミヤコテックの強み」を教えてください。
私は2013年に入社するまで、約13年間、機械の保守点検という、今とは全く異なる技術職に就いていました。二代目である父の体調不良をきっかけに家業を支えようと戻ってきましたが、正直に言えば当初は会社を継ぐという強い意志があったわけではありません。ですが、現場に入って仕事をするうちに、当社の技術のすごさに圧倒されたのです。
当社の武器は、産業機器に使われる特殊な樹脂を100分の1ミリの精度で形にする技術。大手メーカーさんから「ミヤコテックさんじゃないと無理」と頼りにされている姿を見て、職人たちの技術は本当にかっこいいなと感じました。
現在は、売上の7割を支える射出成形をメインとするモールド事業を柱に、発泡体を扱う環境対応型事業、そして自社製の自動機・治具等を一品一様で外販するJES事業という3つの軸を確立しています。大企業の仕組みと、中小企業の職人技。この両方の良さを融合させることが、今の私の使命だと思っています。

- Q2: 技術は「見て盗む」というイメージがありますが、実際はどうなのでしょうか?
製造業の現場には今も「頑固な職人さん」がいます(笑)。中には教えるのがちょっと苦手であったり、自分の技を簡単には見せたくなかったりする大ベテランも正直います。でも、そこを無理に「教えてください」と言っても逆効果ですよね。
だからこそ、私や中堅メンバーたちが間に入って、うまく年齢を重ねた先輩たちを「乗せて」教える気にさせるのです。「この技は〇〇さんにしか分からないから、ぜひ教えてあげてほしい」と敬意を持って接すると、頑固なベテランも少しずつ心を開いてくれます。
こうした泥臭いコミュニケーションをケアしながら、一方で教育の仕組み自体は今どきのスタイルにしています。外部からプロの講師を招いて感覚的な技術をわかりやすく言葉で学ぶ研修を年に10回ほど実施していますし、資格を取る費用も会社が全額出します。頑固な職人技へのリスペクトは忘れずに、新人へは優しく教える。それが当社の教育のかたちです。
- Q3: 若手の提案で「エアコンのダクト」を作ったと聞きましたが、その時のエピソードを教えてください。
全社員を7チームに分けて半年サイクルで進める「全社改善活動」では、職場を良くするようなアイデアを出し合っています。最近では現場の若手から「夏場が暑すぎるのでエアコンのホースを自作して各作業場まで伸ばしたい」という提案がありました。これ、言うのは簡単ですが、実際にやるとなるとホースのセッティングや結合、配置の調整など、ものすごく手間がかかる作業なんです。
普通なら、そんな手間がかかることは効率が悪いと止めてしまうかもしれません。でも、私はその場で部材の購入と実施を即決しました。実は昔、経営が本当にしんどい時期があり、備品1つ買うのも「まだ使えるやろ」と渋っていたことがありました。その頃の社員は「どうせ言っても買ってくれない」という諦めの中で働いていた。当時のような思いを二度とさせたくないんです。
だから、社員が自ら「こうすれば良くなる、楽になる」と考えて提案してくれたことには、たとえ実行するまでに大きな手間がかかるとしても、絶対にノーとは言いません。その手間を惜しまずに工夫しようとする姿勢こそが、自分たちの職場を愛している証拠だと思うからです。お金を出すだけでなく、その面倒なプロセスを会社として許容し、応援することが、社員の成長に繋がると信じています。

- Q4: 仕事以外の特技が、会社で活かされることもあるのでしょうか?
当社の良さは、一人一人の個性を仕事の枠に閉じ込めないところです。例えば、ある女性社員はプライベートで「手作りの小物をフリマで売る」活動をしていました。彼女のデザインセンスが素晴らしかったので「ぜひ仕事でも活かしてほしい」とお願いしたんです。
今では、彼女が当社の採用チラシや会社案内のデザインを全部手がけてくれています。自分の好きなことが会社の役に立って、みんなに喜ばれる。そんな経験を通して、彼女の表情はどんどん明るくなりました。
改善活動でも、工場勤務で入社当時はパソコンなんて触れなかった若手が、今ではPowerPointを使って堂々とプレゼンをしています。役割を決めつけず、お互いの得意なことを認め合う。そんな風土があるからこそ、若手ならではの柔軟な視点で、長年放置されていた在庫が整理されるといった劇的な変化も生まれているのです。

- Q5: 京都の製造業コミュニティについても、中小企業ならではの「助け合い」が残っているとお聞きしました。
京都の製造業には、言葉では言い表せないほどに温かい横のつながりがあります。急ぎの案件のために設備を貸し借りするようなことが、ごく当たり前に行われてきました。大企業の常識からすれば考えられないことですよね(笑)。
でも、この地域全体が1つの工場のようなネットワークこそが、京都の強みなんです。京都商工会議所の「知恵の経営」支援を活用して自社の強みを言語化することや、特許出願の支援を受けるなど、公的なサポートも充実しています。自分たちだけでためこむのではなく、地域のみんなで助け合って成長していく。そんな「顔の見える関係」の中で働くことができるのは、すごく心強いですよ。
- Q6: 面接では、どのような点を見ているのでしょうか?
正直に言うと、私は面接のとき、理屈よりも直感を大切にしています。面接時間はだいたい10分から20分程度と、決して長くはありません。その短い時間の中で私がパッと見て判断するのは、スキルの高さではなく、この人と一緒に笑い合えるかというフィーリングです。表情がこわばったままの人や、こちらの話にあいづちを打ってくれない人は、どうしても心配になってしまいます。
現場の仕事はチームプレイですから、笑顔が出ない、反応がないというのは、本人が一番苦労することになると思います。技術は後からいくらでも教えることができますが、周囲を明るくする笑顔や相手の話を聞く姿勢は、その人が持っている本質的な才能です。
最近はフィリピンからの技能実習生も加わり、現場の雰囲気はさらに優しく、丁寧になりました。多様なバックボーンを持つメンバーが集まる中で、一番大切なのは「お互いを認め合う姿勢」です。過去には若手が定着せず悩んだ時期もありましたが、今は外部の相談窓口も作って、心も体も健康に働くことができるようしっかりとサポートしています。

- Q7: 最後に、これから一歩踏み出そうとしている学生へメッセージをお願いします。
ミヤコテックは、一人一人が主役になれる会社です。大きな組織の一部としてではなく、自分がいなければこの製品は完成しないという確かな手応えを感じながら働いてほしい。そして、仕事を通して、自分にはこんなことができるんだという発見をたくさんしてほしいと願っています。
失敗は怖くありません。むしろ、前向きに挑戦した結果の失敗なら、それは成長への貴重な投資です。安心して自分の可能性を試してください。京都の小さな、でも世界一熱いこの工場で、私たちと一緒にワクワクするような未来を創っていきましょう!
ありがとうございました
今回インタビューさせていただいたのは「ミヤコテック株式会社」様です
法人ページはこちらミヤコテック株式会社








